図書部会ブックレビューvol.4

 

『沈黙』 遠藤周作

遠藤周作氏は、1955年「白い人」で芥川賞を受賞され、一貫した日本の精神風土とキリスト教の問題を追及する一方で、ユーモア作品、歴史小説も多数手がけた。『海と毒薬』『イエスの障害』『侍』『スキャンダル』等が主な作品である。

本書は、1587年から始まったとされるキリスト教迫害による弾圧が行われて以来、布教活動が困難となった日本を舞台に新たに派遣された司祭を中心にドラマチックなストーリーとして語られている。

『沈黙』では、司祭がキリスト教を信仰する日本人が迫害を受ける都度、黙したままでいる神の存在について疑問を抱く描写が複数あげられている。その他にも人と宗教の関係における葛藤があり、それがストーリーのドラマ性を強調する中心となっている。その中で印象が強かった場面が弾圧されるキリスト教徒の立場の中にも、強い者として屈することなく処罰を受けて殉教する者、弱い者として踏絵を踏んで屈してしまう者の視点が語られている箇所である。物語終始において、たびたび登場するキチジローという日本人が格子に囚われた司祭の下を訪れ、告悔をする場面では踏み絵を踏んだ者には、踏んだ者の言い分があったと、と「弱い者」の立場からの切実な訴えをしている。その場面は、日常で無意識のうちに視野から外されがちになる1つの人間の在り方と向かい合ったものとして、強く印象に残った。

宗教者は、世間一般だと融通の利かない盲信する者、という認識が少なからずされている。宗教について教義や論理という視点だけでなく、ドラマ的な物語から見ることが出来る点において『沈黙』はお薦めしたい一冊だ。

〈書籍〉

遠藤周作『沈黙』、新潮社、2010年

定価:本体550円(税別)

無題

(記事:帰依龍馬)

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